親や家族を納税管理人にしても大丈夫?実務上のリスクと注意点を税理士が解説
💡この記事のポイント(30秒でわかる要点)
なぜ注意が必要なのか(背景):海外赴任等で「非居住者」になると、日本国内の税務手続き(書類受領・納付等)を代行する「納税管理人」を立てる必要があります。
家族を指名する際のリスクと影響:法律上は親族の指定も可能ですが、専門知識がないため書類放置や手続き遅延が生じ、無申告加算税や延滞税が発生する実務トラブルが多発しています。
間違えやすい盲点:納税管理人は「送達先・納付窓口」に過ぎず、資格がなければ確定申告の作成・代行権限はない点や、住民票移動だけでは済まない点に注意が必要です。
損せずスムーズに進める対策:家族にかかる実質的負担(時差連絡・申告管理)を考慮し、不動産所得や複雑な税務がある場合は税理士等の専門家への依頼・変更を検討することが賢明です。
はじめに
海外赴任や海外移住が決まった際、日本での税金手続きのために納税管理人を立てる必要があります。このとき、「手続き費用を抑えたい」「連絡が取りやすい」という理由から、親や家族を納税管理人に選ぶ方は少なくありません。
結論から申し上げますと、家族を納税管理人に指定すること自体は法律上まったく問題ありません。しかし、実際の現場では「書類の内容が分からず放置されてしまった」「税務署からの連絡に対応できず納付期限が過ぎてしまった」といったトラブルが数多く発生しています。
この記事では、親や家族を納税管理人に指定する際の実務上のリスク、どのようなケースで専門家へ依頼すべきか、そしてスムーズな手続きを進めるためのポイントを分かりやすく解説します。
1.テーマに関する基本知識
まず、海外在住者の税務に関わる基本的な用語を整理しておきましょう。
非居住者とは、日本国内に住所がなく、かつ現在まで引き続いて1年以上日本国内に居所を有しない個人のことです。所得税法上、居住者と非居住者では課税される範囲が大きく異なります。
国内源泉所得とは、日本国内で発生した所得のことで、不動産の賃貸収入や売却益などがこれに該当します。非居住者であっても、国内源泉所得がある場合は日本で確定申告が必要になることがあります。
納税管理人とは、海外在住者に代わり、日本国内で税務署や自治体からの書類受取り、税金の納付、確定申告書の提出などを行う人のことです。
2.今回のテーマの結論
親や家族を納税管理人にすることには、原則として法律上の制限はありません。税務署や自治体への届出を行えば、親族であっても正式に納税管理人として認められます。
しかし、例外的に「税務の専門知識が必要なケース」や「家族に手続きを任せること自体が負担になるケース」では、途中で問題が生じやすくなります。
確認が必要な事項として、ご自身の所得の種類(家賃収入や不動産売却の有無)、固定資産税の納付方法、ご家族の年齢や健康状態、そして海外からの連絡環境などが挙げられます。
3.法令上の根拠
国税に関する納税管理人の設置については、国税通則法第117条に定められています。非居住者が日本国内に納税管理人を定める場合、税務署長へ届出書を提出する必要があります。
また、地方税である固定資産税についても、各自治体の地方税条例に基づき、納税管理人の申告や届出が求められます。
税法上、納税管理人の資格要件として特定の資格(税理士など)は要求されていません。日本国内に住所等を有する人であれば、原則として誰でも指定が可能です。ただし、納税管理人は単なる書類の受取人にとどまらず、納税義務者の代理として責任ある対応を期待される立場となります。
なお、本記事の解説は令和8年7月現在の法令に基づいています。
4.具体例と実務上の考え方
具体的な事例をもとに考えてみましょう。
たとえば、会社員のAさんが年の途中で海外へ転勤となり、日本に残した自宅マンションを第三者に賃貸する一般的なケースを想定します。Aさんは日本に住む高齢の父親を納税管理人に指定しました。
年間の家賃収入から経費を差し引いた不動産所得があるため、Aさんは日本で確定申告を行う必要があります。しかし、父親は確定申告の仕組みや経費の計算方法が分からず、税務署から届いたお尋ねの書類を放置してしまいました。
その結果、申告期限が過ぎてしまい、無申告加算税や延滞税といった余分な税金が発生するリスクが生じたのです。家族間では悪気がなくても、専門的な知識がないために適切な対応ができないケースは実務上めずらしくありません。
5.間違えやすいポイント
よくある誤解として、「納税管理人を指定すれば確定申告まで自動的に完了する」という思い込みがあります。
納税管理人は、あくまで書類の送達先や納付の窓口となる人です。納税管理人自身が税理士資格を持たない場合、本人の代わりに確定申告書を作成して提出する権限はありません。
また、「住民票を実家に戻しておけば納税管理人の届出は不要」と考える方もいます。しかし、税務上の居住者・非居住者の判定は生活の本拠や滞在期間等で総合的に判断されるため、住民票の移動だけで税務上の手続きを省略できるわけではありません。
6.海外在住者が日本の不動産を所有する場合の注意点
海外在住後も日本の不動産を所有・管理し続ける場合、以下の点に注意が必要です。
・家賃収入と源泉徴収
借り手が法人などの場合、家賃から20.42%の所得税等が源泉徴収されることがあります。この場合、確定申告によって過不足を精算する必要があります。
・固定資産税の通知書
固定資産税の納税通知書は、自治体から納税管理人へ送付されます。納付忘れを防ぐため、口座振替の手続きや送付先の管理を徹底しなければなりません。
・不動産の売却
将来的に日本の不動産を売却する場合、譲渡所得の申告が必要になります。取得時の契約書や費用明細などを事前に保存しておくことが重要です。
7.家族や知人に頼む場合の注意点
親や家族に納税管理人を頼むこと自体が直ちに悪いわけではありません。しかし、以下のような実質的な負担がかかることを考慮する必要があります。
- ・複雑な税務書類や通知書の管理
- ・納付期限の管理と金融機関での手続き
- ・税務署や自治体からの問い合わせ対応
- ・時差がある中での本人との連絡やり取り
長期間にわたる管理は、家族にとって心理的な負担となり、関係性に影響を与えることもあります。ご家族の高齢化や忙しさを考慮し、不安がある場合は専門家への依頼を検討するのが円滑です。
8.よくある質問
Q1.親を納税管理人に指定したあと、途中で税理士に変更することはできますか。
A.はい、変更可能です。変更の際は、あらためて税務署や自治体へ納税管理人の変更届出書を提出する手続きを行います。
Q2.固定資産税のためだけに納税管理人を立てる場合も専門家に頼むべきですか。
A.固定資産税の納付のみで、口座振替などがスムーズに行える環境であればご家族にお願いしても問題ないケースが多いです。ただし、通知書の確認や滞納リスクを避けたい場合はご相談ください。
Q3.海外に住みながら日本の確定申告だけを税理士に依頼することはできますか。
A.申告の作成・提出を依頼することは可能ですが、日本国内での書類受取りや通知の管理を行うために、あわせて納税管理人の選任が必要となるのが一般的です。
9.まとめ
親や家族を納税管理人に選ぶ際は、以下の3点を確認しておきましょう。
- ・家族に税務書類の管理や納付手続きを任せる負担がないか
- ・家賃収入や不動産売却など、確定申告が必要な所得があるか
- ・税務署や自治体からの連絡に素早く対応できる体制があるか
海外在住中の日本側の税務手続きに少しでも不安がある方は、出国日や所得の状況、固定資産税の通知先などを早めに整理しておくことをおすすめします。
海外在住中に日本の不動産を所有している場合、家賃収入の申告、固定資産税の納付、将来の不動産売却、税務署や自治体からの書類対応など、日本側で確認すべき手続きが多く存在します。
親御様やご家族に負担をかけたくない方、確定申告や固定資産税の管理を漏れなく進めたい方は、早めに専門家へご相談いただくと安心です。
アレグリア行政書士法人 × 森本経営会計事務所では、海外在住者の日本側の税務手続き、納税管理人の選任、不動産所得の確定申告、固定資産税、不動産売却に関するご相談に対応しております。
税理士と行政書士の両方の資格を持つ森本雄一が、税務と行政手続きの両面から丁寧にお手伝いいたします。名古屋市天白区を拠点とし、海外在住の方からのオンライン相談にも対応しています。
注意書き:
この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務判断を行うものではありません。実際の申告義務、届出、税額、源泉徴収、租税条約の適用、納税管理人の要否は、居住状況、所得の種類、不動産の利用状況、出国時期、帰国予定、契約内容、居住国、自治体の取扱い等によって異なります。具体的な判断については、関係資料を準備したうえで、税理士等の専門家にご相談ください。





